さぎ草には、思い出がある。
時代は、確か室町時代。登場人物は、世田谷城主の吉良さまと奥沢城主が娘の常盤姫である。吉良の殿さまは忠臣蔵の吉良上野介とルーツは同じであり、常盤姫は常盤御前ではないということで、ふたりの名前はよく覚えている。吉良さまは、何でも十数人の側室があるにもかかわらず、常盤姫の美しさに一目惚れ。奥沢城主は、吉良さまの家来にあたり、姫を側室に差し出すしかなかったらしい。常盤姫は、吉良さまにことのほか寵愛され、身籠る。しかし、例によって他の側室たちの妬みをかうこととなり、不義をはたらいたとの噂をたてられる。吉良さまは、常盤姫が身籠った子どもが本当に自分の子であるかを疑うようになる。常盤姫は悲しみ、奥沢城時代から可愛がっていた鷺の足に自らの潔白をしたためた手紙をつけて奥沢城に向けて放つ。この鷺は、たまたま狩りをしていた吉良さまに射落とされる。鷺の足にとりつけてあった常盤姫の手紙を読んだ吉良さまは、常盤姫の身の潔白を確信し、急ぎ城に戻るも、すでに常盤姫は自ら命を絶ってしまっていた。鷺が射落とされた場所には、いつからか鷺草が咲くようになった、というお話である。
