12月13日の日経新聞の朝刊に「サハリン2、通年で石油輸出 新積み出し基地が完成」という記事があった。
サハリン2の事業主体である「サハリンエナジー」が、サハリン南部のアニワ港で建設をしていた石油積み出し基地のことである。
この話は、今年の9月中旬頃に読んだ黒木 亮 著「エネルギー(上・下)」(日経BP社)の経済小説に実名にて描写されている。黒木 亮 氏は、三和銀行、三菱商事での勤務経験があり、国際協調融資、プロジェクトファイナンスの案件を手がけたことがあるようだ。従って、経験と取材に基づいたストーリー展開であるため、小説とはいえ実像に近いストーリーのように思われる。
この小説のメインとなる時代背景は、1997年のアジア通貨危機の頃から2007年の米国のサブプライム問題が表面化するあたりまで。
この10年間のエネルギーを巡るいろいろなプロジェクトが描かれている。
プロジエクトとしては、イランおよびイラクの石油事業、サハリンⅡプロジェクト、エネルギーデリバティブである。
主な登場人物は、若手商社マン・金沢明彦、ベテラン商社マン・亀岡吾郎、官僚・十文字 一、 投資銀行から商社マンにヘッドハントされた秋山修二、中国航油CEOのチェン・ジウリンの5人である。
この5人が、第2次湾岸戦争、アジア通貨危機、ロシア資源ナショナリズムを時代背景として、それぞれのプロジクトを推進したり、断念したりといったストーリー展開である。
小説とはいえ、登場人物もプロジクトもモデルがあり、 チェン・ジウリンに至っては実名である。
国際的なビックプロジクトの実像の一面を知るという意味では、興味深いが、われわれ一般人には隔世の感がある。

この「エネルギー」のあと、「巨大投資銀行」、デビュー作である「トップ・レフト」の3作を読んだが、いずれも同様の読後感を持った。
国際金融の専門用語は、文中にも散りばめられているが、巻末にもまとめて解説が掲載されている。
しかしながら、世界を舞台にしたスケールの大きなストーリー展開ではあるが、何かモノ足りなさもある。
小説の原稿量は多いのだが、それでも何となくあらすじを読んでいるようなモノ足りなさである。
それは、これだけのストーリー展開であるにもかかわらず、これら小説にはロマンスの展開もなければ、人間臭い部分もさりげない。
書き急いでいる感じが否めない。
「エネルギー」は、日経BPのホームページでの連載小説であったようなので、そのあたりは仕方がないのかもしれない。
いずれにしても、面白い本。
これら3冊の中では、「トップ・レフト」がお勧め。なれど、ちょっと、苦言というか、以下、失敗談を紹介したい。

これは、本を購入した後にわかったことであるが、「トップ・レフト」の文庫版は、角川文庫と祥伝社の2社が出版している。前者のタイトルは「トップ・レフト - ウォール街の鷲を撃て」、後者のそれは「トップ・レフト - 都銀vs।米国投資銀行」とあり、サブタイトルが異なっている。私は、通販のアマゾンで本を購入することが多い。この本を購入した人はこんな本もあわせて購入しているとネットで紹介されている。疑うことなく、これらは連作モノとして思って2冊を購入。「ウォール街の鷲を撃て」を読了後、「都銀vs米国投資銀行」を読み始め、アレッ!?

中身がまったく同じであることに気づいた。
まさに、ディールで大損をしたような気分。
購入されるみなさんも、ご用心、御用心!